津村記久子さん著書の「うそコンシェルジュ」を読みました。
この本の感想・レビューをお伝えします。
津村記久子さんは、「ポトスライムの舟」で、2009年に第140回芥川賞を受賞されており、エッセイやお仕事小説をたくさん書かれています。
「うそコンシェルジュ」は、うそをつくことの大変さやゆううつさをリアルに描いた小説です。
表題作を始め、数ページで終わる超短編小説から長めの小説まで、全11作あります。
過去に津村記久子さんの作品を読んだことがある方に、おすすめしたい1冊です。

完璧にばれないうそをつくって、大変ですね。
「うそコンシェルジュ」感想・レビュー

「うそコンシェルジュ」の感想・レビューは、
- いちばんのおすすめは「うそコンシェルジュ」
- 詐欺師でない人が、完璧なうそをつくのは大変
- 1つのうそを、たくさんの人で完成させる奇妙さが面白い
では、1つずつ説明していきますね。
いちばんのおすすめは「うそコンシェルジュ」
この本は、表題作「うそコンシェルジュ」「続うそコンシェルジュ」の他に9作品、全11作品の短編小説集です。
最もおすすめする作品は、やはり表題作の「うそコンシェルジュ」です。
お仕事小説のイメージが強い津村記久子さんですが、この物語は仕事というよりも、ウソをつくまでの実況中継のようなお話です。
主人公と同じ職場の人が登場しますが、仕事の話ではありません。
「うそコンシェルジュ」以外の小説は、数ページで終わる超短編から、そこそこのボリュームの短編もあります。
表題作以外は、物語につながりが一切ありません。
メインはやはり「うそコンシェルジュ」で、いちばんのおすすめ作品です。

全11作品の短編小説集です。いちばんのおすすめは「うそコンシェルジュ」!
個人的には、「二千回飲みに行った後に」「居残りの彼女」も好きです。
表題作以外の小説は、さまざまな年齢・環境の人が主人公になっています。
人によって、お気に入り作品が違ってきそうです。
あなたのお気に入りを見つけてください。
詐欺師でない人が、完璧なうそをつくのは大変
表題作「うそコンシェルジュ」は、主人公の女性が、あるウソをついたことをきっかけに、姪からウソの依頼をされてしまいます。
私達もウソをつく機会は、意外と多いのではないでしょうか。
- 気が合わない人が、職場の飲み会に参加するので欠席したい
- 友達と食事の約束をしていたが、急な家族の都合でキャンセルしたい
- 親戚の集まりに参加したくない
などでしょうか。
このような時につくウソは、後で誰かに迷惑をかけることはありません。
自分ひとりだけで、こっそりとつくようなウソですね。
しかし、主人公が姪に依頼されたウソは、このようなタイプではありません。
- 事前に計画を立てて、複数人で1つのウソを実行する
- ウソをついた後、誰かの今後が変わる可能性がある
と大掛かりなものです。
ウソを依頼された主人公は、サギ師でもない会社員。
いたって善良そうな人です。
嘘をつく人は信用できない、などと言わないでください。
彼女は、頼まれて仕方なくウソをつくのです。
善良な人だからこそ、断れずにウソをついてしまう・・・この矛盾をずっと抱えてしまいます。
そして罪悪感も抱えてしまうのです。

計画を立てた壮大なウソに、主人公は罪悪感を抱えてしまいます。
人の人生を変えてしまうほどの大きなウソではありません。
しかし、誰かの今後が変わるかもしれない程度のウソなのです。
プレッシャーや罪悪感を抱えてしまうのも当然かもしれません。
1つのうそを、たくさんの人で完成させる奇妙さが面白い
1つのウソをつくために、複数人で実行します。
ウソ実行のために、カフェなどで事前会議を行います。
ものすごく仲がよい人たちではありません。
知り合いの知り合い、そのまた知り合い、のような関係の人たちです。
お互いの性格を知り尽くしている間柄ではありません。
この計画がなければ会う機会がない人たちと、1つのウソをつく奇妙さが面白いのです。

それほど親しくない複数人で、1つのウソをつく奇妙さが面白いです。
主人公とそれほど親しくない微妙な関係の人が登場します。
読んでいてわかりにくい部分があるかもしれません。
複雑な物語ではないので、ゆっくりと読み進めれば大丈夫でしょう。
「うそコンシェルジュ」は、過去に津村記久子さんの本を読んだことがある方に、おすすめしたい1冊です。
善良で真面目な人たちが計画を立てて、1つのウソをつく奇妙さが、とても面白いです。

うそをつかなくてよい人生を送りたい!
【津村記久子さん著書レビュー記事】
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