阿部暁子さん著書の「カフネ」という小説を読みました。
この本の感想・レビューをお伝えします。
阿部暁子さんは、他にも「カラフル」「金環日食」などの作品があります。
「カフネ」は、2025年本屋大賞ノミネート作品です。
さらに、第8回(2024年)未来屋小説大賞も受賞しています。
「未来屋小説大賞」とは、未来屋書店の書店員さんがおすすめする本を決定する賞です。
未来屋書店独自の本屋大賞のようなものでしょうか。
生活を整えることの大切さ、人と寄り添い、支え合うことの心地よさを教えてくれる1冊です。

人と寄り添うことの大切さを教えてくれる1冊です。
「カフネ」感想・レビュー

「カフネ」の感想・レビューは、
- 極端な性格の2人が心を通わせる姿が面白い
- 余裕がない人に目を向けるカフネの姿勢が素晴らしい
- 食事の大切さを理解できる
- 生きづらさを抱えた人に寄り添う人が素晴らしい
では、1つずつ説明していきますね。
極端な性格の2人が心を通わせる姿が面白い
「カフネ」の主人公は、公務員の薫子です。
薫子は、ある出来事がきっかけで「せつな」という女性と再会します。
2人は、過去に1度だけ会ったことがあります。
年齢も性格も全く違う2人。
打ち解けることなど絶対にあり得ない2人ですが、次第に心を通わせるようになります。
少しずつ打ち解けていくのですが、この様子が面白いのです。
お互いの意見をぶつけ合いながら、相手を理解していきます。
大人同士は「あの人、どうも気が合わなさそう」と感じた時点で、距離を置くのがほとんどでしょう。
しかし、薫子とせつなは、言いたいことをはっきり言ってしまいます。
もしかしたら、似た者同士なのかもしれません。

正反対の性格をしている薫子とせつなの打ち解けていく様子が、この小説いちばんの見所です。
女性同士で気が合わないと、なかよくなるのは本当に難しいのですが、 一緒にボランティア活動を続けるうちに心を通わせていきます。
少しずつ心を通わせていく2人の変化が、この物語のいちばんの見どころです。
余裕がない人に目を向けるカフネが素晴らしい
この小説の「カフネ」とは、家事代行サービスを請け負う会社です。
カフネは通常の有料サービスの他に、チケット制度を設けています。
チケットを利用して、無料で家事代行サービスを受けられます。
家事代行と聞くと、夫婦共稼ぎや単身一人暮らしで、時間に余裕はないけど経済的に余裕がある人が利用するイメージがありますね。
カフネは無料チケットがあるので、経済的に余裕がない人も利用できます。
このチケットは、有料サービスを利用してもらうためのお試し券だそうです。
とは言え、無料だと経済的に余裕がない人も利用できますね。
お金に余裕がない人にまで配慮された家事代行サービスとは、素晴らしいです。
チケットのお客様だからといって、カフネのスタッフは手抜きをしません。
チケット利用者の部屋もピカピカにして、栄養バランスの取れた食事を用意します。

お金に余裕がない人が利用できるチケットがある「カフネ」は素晴らしい!
きれいなお部屋やバランスの取れた食事で身の回りを整えて生活することは、生きていくためにとっても大切なことなのですね。
カフネのスタッフたちに教えてもらった気がします。
食事の大切さを理解できる
薫子とせつなは、食事を通してお互いの心の距離を少しずつ縮めていきます。
食事は、とても大切なもの。
お腹を満たすのはもちろんのこと、心まで満たしてくれます。
2人での食事なら、会話をすることがほとんどでしょう。
食事をしながらの会話は、お互いの気持ちが近づくような気持ちになれます。
薫子とせつなだけではありません。
薫子の家族、カフネの利用者・・・みんなの心が食事でほぐれていきます。
栄養バランスの取れた食事は大切ですが、心も満たしてくれる食事を取るようにもしていきたいものです。
最近は、「こども食堂」の活動もさかんに行われています。
1人だけでなく、みんなで食事をすることが大切ではないでしょうか。

誰かと一緒に食事をすることは、とても大切なことですね。
一人暮らしで、誰かと食事をするのが難しい人もいらっしゃるかもしれません。
最近は、地域で食事会やイベントを開催するなど、いろいろな取り組みもされているそうです。
食事はいつも一人ではなく、時々は誰かとする方がよいことの表れかもしれません。
生きづらさを抱えた人に寄り添う人が素晴らしい
「カフネ」の表紙は、食事を終えた後の食器のような写真です。
食事をテーマにした小説のように見えますね。
確かに食事が重要なテーマになっています。
しかし、テーマは食事だけではありません。
この物語には、生きづらさを抱えた人が多く登場します。
- 家族とうまくいかない
- 家族がいない
- (時間・経済的に)生活に余裕がない
など、問題を抱えた人たちに寄り添う人も多く登場します。
問題を抱えた人が、寄り添う側の人になっている場面がたくさんあります。
- 経済的に余裕がある人が、家族のいない人を助ける
- 料理の上手な人が、時間のない人に栄養バランスの整った食事を作る
- 話を聞く時間のある人が、悩みのある人の話を聞く
などの場面です。
生きづらさを抱えた人でも、違う立場で手助けできる場面は意外と多いのかもしれません。

生きづらさを抱えた人が、他の人の問題にそっと寄り添う姿が多く登場します。
「カフネ」は、いろんなことを教えてくれる小説です。
- 部屋をきれいにして生活を整える大切さ
- 誰かと共に食事をすることの心地よさ
- 生きづらさを抱えた人でも、違う立場で手助けはできる
など、いろんなことを教えてくれる奥深い1冊です。
ハードな現代社会を生きる私達に、ひとつの答えを教えてくれたような気がしました。

どんな状況でも、生活を整えるって大切!
【2025年本屋大賞ノミネート作品レビュー記事】
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