「スピノザの診察室」夏川草介(本屋大賞ノミネート)感想・レビュー

「スピノザの診察室」感想・レビューアイキャッチ

夏川草介さんの小説「スピノザの診察室」を読みました。

この本の感想・レビューをお伝えします。

夏川草介さんは、現役の医者だそうです。

だから、病院内の描写や症状について、あれだけくわしく書けるのですね。

過去の作品には「神様のカルテ」があります。

文字のみなので、画面が白黒の端末で読むのがおすすめ

あきぶどう

とても優しいお話です。

「スピノザの診察室」感想・レビュー

医者と患者の写真

「スピノザの診察室」の感想・レビューは、

  • 「神様のカルテ」の世界観と似ている
  • 京都の町並みや和菓子の描写が逸脱
  • マチ先生の優しい人柄にホッとする

では、1つずつ説明していきますね。

「神様のカルテ」の世界観と似ている

夏川草介さんの小説は、他に「神様のカルテ」があります。

映画化もドラマ化もされました。

どちらかを観た方もいらっしゃるのではないでしょうか。

両者は、とてもよく似た世界観の小説です。

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「神様のカルテ」は、信州が舞台でした。

「スピノザの診察室」の舞台は、信州ではありません。

京都の町並みや和菓子の描写が逸脱

「スピノザの診察室」の舞台は京都です。

京都市内の町並みはもちろんのこと、和菓子の描写が逸脱です。

車は三条京阪の信号で停車した。京都でも最も繁華な交差点のひとつである。広い交差点を様々な装いの人が渡っていく。・・・左手には、それらを見守るように御所に向かって手をついた高山彦九郎の銅像が座している。

「スピノザの診察室」より

京都の魅力は、交通量の多い道路と雑多な人の多さ、それに歴史ある建築物の共存した景色です。

京都は、修学旅行や家族や友人と、一度は行ったことがある方がほとんどでしょう。

あの独特の風景が目に浮かびます。

ピンポン玉ほどのその餅菓子は、北野天満宮の名物のひとつで雪のように白い餅皮と甘みを控えた漉し餡が絶品である。

「スピノザの診察室」より

京都で最も有名なお菓子は、八つ橋でしょうか。

他にも、由緒ある和菓子がたくさんあります。

和菓子の描写がとても繊細で、思わず食べたくなってしまいます。

「スピノザの診察室」は、医者と患者・京都の町並み・和菓子の3本柱がバランスよく散りばめられています。

読者を飽きさせません。

京都(金閣寺)のイラスト

医者と患者・京都の町並み・和菓子の3本柱で物語が進みます。

医療のことばかりが書かれていては、知識がない読者には、難しすぎるかもしれません。

しかし、京都のことがたくさん書かれていて、難しさを感じることなく読み進めることができます。

マチ先生の優しい人柄にホッとする

「スピノザの診察室」の主人公は、通称マチ先生という医師です。

医師が主人公ですが、知識がなくても読めるように配慮されています。

難しい言葉もありますが、さりげなく解説がされています。

わからなくても、物語そのものの理解に影響はありません。

マチ先生が務める病院は、大学病院のような先端技術を扱う大病院ではないのです。

入院設備が少しだけある、そこそこの規模の病院という感じです。

患者は、老人がほとんどです。

マチ先生を始め、医師たちが、診察や往診をしながら、優しく患者を見守り、適切な治療をします。

劇的な進展があまりなく(少しありますが)、全体にゆったりした状態で話が進みます。

医者と患者のイラスト

決して大きくない病院が舞台の優しい物語です。

「ここでやってる医療は、多分先生が見てきた医療とはちょっと違う。患者さんの多くは、認知症とか進行した癌とか、あとは棺桶に片足突っ込んだようなお年寄りとかばかり。『治る人』なんてほとんどいない」

「スピノザの診察室」より

この病院の医師たちは、がんばって生きてこられた老人たちの病状や、生活状態を見ながら、その人に最適な方法を探りつつ治療をしています。

大学病院のような、研究や技術を磨く病院は、必要不可欠です。

研究や技術の進歩がないと、病気を治すことができません。

その一方で、体調や生活を見ながら、最適な治療を進める病院も、同じくらい必要なのではないでしょうか。

高齢化社会と言われる現在、このような病院は、ますます必要だと感じます。

そして、マチ先生たちのように、優しく老人たちを見守る医師も必要不可欠です。

あきぶどう

マチ先生のような先生がいると、病気になっても心強いです。

【おまけ】2024年本屋大賞2位の「水車小屋のネネ」も載せています。心が温まる小説です。

「水車小屋のネネ」アイキャッチ

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