夏川草介さん著書の「臨床の砦」「命の砦」を読みました。
この2冊の感想・レビューをお伝えします。
コロナ禍の長野県にある病院を描いた物語です。
夏川草介さんは、現役の医者でありながら、小説家でもあります。
おそらく事実を忠実に再現した小説です。
緊急事態宣言が発令中の頃、ニュースで病院の映像を見たことはありますが、文字で読むと想像以上に切実だったのだなと改めて心を打たれました。
「命の砦」は、「レッドゾーン」として発売された単行本を「命の砦」と改題しています。
![](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2022/11/7f389fecb3852ce28a712f7445baeb61.png)
緊急事態宣言も数年前の話・・・これもお医者さんのおかげです。
「臨床の砦」「命の砦」どっちから読む?
![防護服の写真](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/2-2.jpg)
「臨床の砦」と「命の砦」は、タイトルも表紙もよく似ています。
シリーズものなのかなと思えますね。
この2冊は、どちらも長野県の同じ病院が舞台です。
登場人物も、ほぼ同じ。
それぞれが読み切りなので、どちらから読んでも構いません。
もちろん1冊だけでも大丈夫。
発売は「臨床の砦」が先、「命の砦」が後です。
小説の時系列も同じ順ですが、後で発売の「命の砦」は、先に発売の「臨床の砦」よりも、さらに過去を思い出す形で話が進みます。
![病院の待合室のイラスト](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/virus_hanareru_machiaishitsu.png)
「臨床の砦」と「命の砦」は、2冊とも同じ病院、ほぼ同じ登場人物の小説です。
では、先に発売された「臨床の砦」の感想・レビューをお伝えしますね。
「臨床の砦」感想・レビュー
![パンデミックの街の写真](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/3-1.jpg)
「臨床の砦」の感想・レビューは、
- 長野県もパンデミックになりつつある様子が想像できる
- パンデミック時の医師・看護婦の苦労は計り知れない
すでに東京ではパンデミックとなり、長野県でも患者が急速に増加した頃の物語です。
私が実際に目にし、経験した事実に基づいている。敢えて小説という形式を用いたのは、この感染症に関して、事実をそのまま述べることは、多くの人を傷つける可能性があるからに他ならない。
「命の砦」より
リアル医師でもあり、小説家でもある著者が、事実を元に書いた小説です。
小説ではあるものの、かなり事実に近い作品のようですね。
当時はコロナ感染者が日本各地で激増し、首都圏を始めパンデミック化した地域がありました。
当然、長野県にもパンデミックの波が訪れます。
都市部は病院も医師も多いですが、長野県は病院の数も医師の数も、都市部よりもかなり少ないのです。
患者が激増すると、1つの病院どころか、地域全体の医療崩壊になってしまう危険がありました。
あの頃は、都市部でも病院に行けずに自宅待機を余儀なくされる人、さらに自宅待機のままで命を落とす人までいました。
病院が少ない地域で同じことが起こるとどうなるか・・・想像するだけでも恐ろしいです。
新型コロナの流行からパンデミックになりつつある頃を描いたのが「臨床の砦」です。
![病院に並ぶ人たちのイラスト](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/hospital_gyouretsu.png)
都市部ほど病院が多くない長野県。パンデミックが起きつつあるドキュメンタリー小説が「臨床の砦」です。
では、もう1冊の「命の砦」の感想・レビューをお伝えしますね。
「命の砦」(レッドゾーン)感想・レビュー
![防護服の写真](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/be9459797fa6a08874b36a83e642fcb7.jpg)
「命の砦」の感想・レビューは、
- 新型コロナ初期の医療現場の苦労が理解できる
- 未知の病に立ち向かう医師・看護婦の恐怖や不安は計り知れない
コロナが世界的に流行し始めて、ついに日本にも到着した頃の物語です。
新型コロナウイルス感染症はごくありふれた疾患であり、一般の診療所で診察し、投薬して治療する。そのありふれた疾患に対して、冷や汗を掻き、恐怖に手を震わせながら診療している本書の登場人物たちの姿は、ほとんど滑稽と言ってもよい。
「命の砦」より
今でこそ「コロナにかかって大変だったよ~。」などと世間話をしますが、ほんの少し前までは、とても大変なことでした。
コロナ禍の始まりは、横浜港に到着したクルーズ船を想像する方も多いのではないでしょうか。
首都圏から離れた長野県の医師たちは、遠い都会の出来事としてテレビで見ていたそうですが、まもなく横浜から長野県へクルーズ船の乗客が搬送されます。
ほんの数年前とは言え、新型コロナが未知の病だった頃です。
病院の医師や看護婦たちの不安や恐怖は想像できません。
医師とは言え、未知の病に対応することを想像して、医者になった人は、いなかったのではないでしょうか。
自分だけではなく、家族もいますし・・・。
気持ちの整理がつかず、それでも意を決して対応する医師・看護婦の姿が描かれています。
「命の砦」は、横浜港のクルーズ船から感染者が搬送された頃を、医師が思い出す形で物語が進みます。
![ドライブスルーPCR検査のイラスト](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/car_drive_through_pcr.png)
新型コロナ感染者が、日本で出始めた頃のドキュメンタリー小説が「命の砦」です。
「レッドゾーン」を文庫化して再発売した本です。
すでに「レッドゾーン」をお持ちの方は買う必要はありません。
「あの頃はそうだったなあ。」と思い出しつつ読めます。
まとめ
![COVID-19の写真](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2024/12/4.jpg)
- 都市部はパンデミック化し、長野県も患者が急速に増加した頃の物語
- 長野県もパンデミックになりつつある様子が想像できる
- パンデミック時の医療現場の苦労は計り知れない
- 「レッドゾーン」を改題して文庫化した小説
- 新型コロナが世界で流行し、日本にも到着した頃の物語
- 新型コロナ初期の医療現場の苦労が理解できる
- 未知の病に立ち向かう医師・看護婦の恐怖や不安は計り知れない
2冊は同じようなタイトルで、同じような表紙です。
1冊ずつの読み切りですが、登場人物は、2冊ともほぼ同じです。
シリーズと言ってもよいでしょう。
新型コロナがパンデミックとなりつつある頃が「臨床の砦」、日本で感染者が出始めた頃が「命の砦」です。
限りなく事実に近いドキュメンタリー小説でした。
ずいぶん昔の出来事のように思えますが、新たな新型が出るかもしれませんし、違う感染症が生まれるかもしれません。
この2冊を読んで、医師・看護婦たちの覚悟や差し迫ったやり取りを、頭のすみっこに保存しておくのもよいかもしれません。
![](https://atama-muji.com/wp-content/uploads/2022/11/8746a977628c3d86ccede4e5d1cac988.png)
非常事態の時は、病院に行かないように自分の体調管理が大切かも・・・。
【おまけ】夏川草介さん著書で2024年本屋大賞ノミネート「スピノザの診察室」も載せています。
「ブックレコメンド」にレビューを載せていただきました。
文字のみなので、画面が白黒の端末で読むのがおすすめ