芥川賞と直木賞は聞いたことがありますか?
メディアで同時に取り上げられることが多い賞ですが、違いがわかりにくいですよね。
別の名前をつけているのだから、違いがあるはずです。
芥川賞と直木賞は何が違うのか、どっちがすごいのかを説明していきます。
さらに、本屋大賞との違いもお伝えします。
はっきりとした違いがあるんだよ。
どちらも日本で発表された作品に対して、与えられる賞です。
まずは、芥川賞から説明していきますね。
「芥川賞」とは
「芥川賞」は、正式には「芥川龍之介賞」と言います。
どんな賞なのでしょう。(選考委員は2024年7月現在)
雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞です(公募方式はありません。)・・・現在の選考委員は、小川洋子・奥泉光・川上弘美・川上未映子・島田雅彦・平野啓一郎・松浦寿輝・山田詠美・吉田修一の各氏です。
「公益財団法人日本文学振興会」公式HPより一部抜粋
過去の受賞者は、
- 又吉直樹
- 辻仁成
- 村上龍
- 石原慎太郎
などです。
ピースの又吉直樹さんが受賞された時は、すごく話題になっていましたね。
芥川賞は、ピースの又吉直樹さんが受賞されて話題になりました。本もたくさん売れたそうです。
上半期(前年12月から5月までに発表されたもの)の選考会は7月中旬に行われ、受賞作は「文藝春秋」9月号に全文が掲載されます。下半期(6月から11月までに発表されたもの)の選考会は翌年1月中旬に行われ、「文藝春秋」3月号に全文が掲載されます。
「公益財団法人日本文学振興会」公式HPより一部抜粋
第172回(2025年1月)受賞作は、「DTOPIA」「ゲーテはすべてを言った」です。
第171回(2024年7月)受賞作「バリ山行」のレビューは下をご覧ください。
芥川賞受賞作の掲載雑誌は、「文藝春秋」です。
全文が掲載されます。
芥川賞は、「純文学」のジャンルに送られます。
では純文学とは、どんなジャンルなのでしょう。
「純文学」とは
「純文学」とは、次の通りです。
純文学(じゅんぶんがく)は、大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説を総称する、日本文学における用語。
Wikipedia「純文学」より一部抜粋
「娯楽性よりも芸術性に重きを置いている小説」です。
本格的な小説と言ったところでしょうか。
次は「直木賞」について、説明していきますね。
「直木賞」とは
「直木賞」は、正式には「直木三十五賞」と言います。
どんな賞なのでしょう。(選考委員は2024年7月現在)
新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞です(公募方式はありません。)・・・現在の選考委員は、浅田次郎・角田光代・京極夏彦・桐野夏生・髙村薫・林真理子・三浦しをん・宮部みゆきの各氏です。
「公益財団法人日本文学振興会」公式HPより一部抜粋
過去の受賞者は、
- 池井戸潤
- 東野圭吾
- 桐野夏生
- 林真理子
- 青島幸男
などです。
池井戸潤や東野圭吾の作品は、ドラマや映画になっている作品が多いですね。
エンターテイメント性に優れているということでしょうか。
直木賞は、ドラマや映画になっている作品が多いです。
授賞は年2回で、上半期(前年12月から5月までに発表されたもの)の選考会は7月中旬に行われ、受賞作は「オール讀物」9・10月合併号に一部掲載されます。下半期(6月から11月までに発表されたもの)の選考会は翌年1月中旬に行われ、「オール讀物」3・4月合併号に一部掲載されます。
「公益財団法人日本文学振興会」公式HPより一部抜粋
第172回(2025年1月)受賞作は、「藍を継ぐ海」です。
第171回(2024年7月)受賞作「ツミデミック」のレビューは下をご覧ください。
直木賞受賞作の掲載雑誌は、「オール讀物」です。
一部のみが掲載されます。
「エンターテイメント作品」とは
説明するまでもありませんが「エンターテイメント」とは、次の通りです。
エンターテインメントは、人々を楽しませる娯楽を指す。
Wikipedia「エンターテイメント」より一部抜粋
つまり、「娯楽のための小説」です。
芥川賞は純文学、直木賞はエンターテイメント作品だね。
どっちも個人名だね。
芥川賞と直木賞 どっちがすごい?
芥川賞と直木賞は、趣旨が全く違います。
どっちが優れているとは言えません。
- 芥川賞は直木賞より文学性が高い作品
- 直木賞は芥川賞より娯楽性が高い作品
です。
興味があるジャンルはどっちか、チャレンジしたい方はどっちかで、読書本を決めましょう。
芥川賞と直木賞は、趣旨が違うので、どっちが優れているかは決められません。
これまでは、芥川賞と直木賞の違いを説明してきました。
ところで、この2つの賞を作った人は誰なのでしょう。
芥川賞・直木賞は誰が作った?
芥川賞・直木賞を作った人は、大正時代から戦後にかけて活躍した小説家の菊池寛です。
まずは、芥川賞について説明します。
芥川龍之介賞
文藝春秋の創業者・菊池寛(明治21年~昭和23年)が、友人である芥川龍之介(明治25年~昭和2年)の名を記念し、直木賞と同時に昭和10年に制定しました。
「公益財団法人日本文学振興会」公式HPより一部抜粋
直木賞は、
直木三十五賞
文藝春秋の創業者・菊池寛(明治21年~昭和23年)が、友人である直木三十五(明治24年~昭和9年)の名を記念し、芥川賞と同時に昭和10年に制定しました。
「公益財団法人日本文学振興会」公式HPより一部抜粋
同じ年に作られた賞なのですね。
「芥川龍之介」も「直木三十五」も、菊池寛の友人の名前です。
友達の名前が、これだけ有名な賞になったのか・・・。
友達思いな人だ・・・。
芥川賞受賞作が掲載される「文藝春秋」と、直木賞受賞作の一部が掲載される「オ―ル讀物」は、文藝春秋社の雑誌です。
芥川賞と直木賞の受賞作品は、文藝春秋社の雑誌に掲載されます。
「文藝春秋」は、どのような目的で作られた雑誌なのでしょう。
1923年(大正12年)1月、人気作家となった寛は若い作家のために雑誌『文藝春秋』を創刊する。
Wikipedia「菊池寛」より一部抜粋
元々は若い作家が執筆するための雑誌だったようです。
新人作家のための雑誌は、現在でもありますね。
最近で言えば、スマホで読める小説投稿サイトのようなものでしょうか。
文藝春秋は、小説投稿サイトの役割だったんだ。
当然スマホがなかったから、雑誌だったんだろうね。
「文藝春秋」も「オ―ル讀物」も文藝春秋社の雑誌です。
文藝春秋社は、菊池寛が創業して、現在も存在している出版会社です。
2023年に、文藝春秋は創立100周年を迎え、本が発売されています。
ところで、芥川賞と直木賞ができた昭和10年とは、どんな時代だったのでしょう。
少し調べました。
満州事変が昭和6年、日中戦争開始が昭和12年、太平洋戦争開始が昭和16年です。
戦争まっしぐらへ進む時代のようですが、人々は読書ができていました。
芥川賞・直木賞が創設されたのは、どんな時代?
芥川賞・直木賞が創設された昭和10年頃の労働環境について、説明していきます。
この頃は、
- 重化学工業・繊維工業が盛ん
- 長時間労働・低賃金が問題となっていた
- 女性は繊維工場で働く人が多く、男性以上に劣悪環境で働いた
など、労働環境が、あまりよくない時代でした。
長時間労働と低賃金・・・。
今とあまり変わらないね。なんか複雑・・・。
その一方で、大衆文化も盛んになりました。
- ラジオ番組の普及
- 映画
- 文芸誌・大衆雑誌が多数発行
- 図書館が増えた
など。
職場環境に対するストレス解消のために、このような文化が発達したのかもしれません。
雑誌が増え、図書館が増えたということは、読書環境が整った時代でもあります。
この頃の通勤は、すでに電車やバスなどの公共交通機関でした。
通勤途中に読書をする人が多かったと予想できます。
さらに町に図書館が増え、本を読む機会が増えていった時代でもあったのです。
このような時代に、新人作家の賞が文芸誌で作られたのは、世の中の自然な流れであったのはないでしょうか。
芥川賞・直木賞ができたのは、当時の時代背景と関係がありそうです。
本に関する賞と言えば、「本屋大賞」も、メディアで多く取り上げられますね。
本屋大賞は、芥川賞や直木賞とは、創立された時期が全く違います。
「本屋大賞」とは
「本屋大賞」は、芥川賞・直木賞とは全く違う賞です。
一覧表にまとめました。
本屋大賞 | 芥川賞 | 直木賞 | |
できた年 | 2004年 (平成16年) | 1935年 (昭和10年) | 1935年 (昭和10年) |
発表月 | 4月 | 1月・7月 | 1月・7月 |
作った人 | 本屋大賞 実行委員会 | 菊池寛 | 菊池寛 |
ジャンル | 小説・発掘本 | 小説 | 小説 |
決める人 | 全国の書店員 | 選考委員 | 選考委員 |
本屋大賞は、公式HPで次のように説明されています。
出版市場は書籍、雑誌とも年々縮小傾向にあります。出版不況は出版社や取次だけではなく、もちろん書店にとっても死活問題です。 その状況の中で、商品である本と、顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が、売れる本を作っていく、出版業界に新しい流れをつくる、ひいては出版業界を現場から盛り上げていけないかと考え、同賞を発案しました。
「本屋大賞公式HP」より一部抜粋
2024年の本屋大賞受賞作は、「成瀬は天下を取りにいく」です。
一般の書店員の投票で選ぶ本屋大賞のノミネート作品は、専門の委員が選ぶ芥川賞や直木賞よりも読みやすいとされています。
くわしくは、下をご覧ください。
本屋大賞は、読書離れが進む現代にできた、新しい賞です。
芥川賞・直木賞は、読書が盛んな時代に作られたのに対して、本屋大賞は、読書離れが進む現代だからこそ作られた賞なのです。
まとめ
- 「芥川賞」は、新人作家に送られる純文学の賞
- 「直木賞」は、新人・中堅作家に送られる
エンターテイメント小説の賞 - 「芥川賞」と「直木賞」に、
どっちがすごいかは決められない - 「芥川賞」も「直木賞」も
菊池寛が昭和10年に作った - 昭和10年は読書が盛んになった時代
- 「芥川賞」「直木賞」は、
「本屋大賞」とは大きく違う
「芥川賞」も「直木賞」も、とても古い賞です。
一方、「本屋大賞」は平成時代にできた新しい賞です。
時代背景も、「芥川賞」と「直木賞」の頃と、「本屋大賞」の頃では、全く違います。
あまり本を読まない方は、まずは本屋大賞のノミネート作品から読み始めて、直木賞、芥川賞のノミネート作品を読むのが、おすすめです。
3つの賞のことが、よく理解できました。
よかったです!
芥川賞と直木賞って、何が違うの?