「傲慢と善良」が映画化されました。
キャストは、藤ヶ谷太輔さんと奈緒さんのダブル主演です。
著者は、辻村深月さん。
辻村深月さんの作品は、他にも「かがみの孤城」「ツナグ」など、多くの作品が映画化・ドラマ化されています。
「傲慢と善良」の原作本をやっと読みました。
感想・レビューをお伝えします。

とても読み応えがある1冊です。
「傲慢と善良」感想・レビュー

「傲慢と善良」の感想・レビューは、
- 長編小説なので時がかかる
- 「傲慢と善良」は恋愛小説?ミステリー小説?
- 全編を通して「痛いトコつくなあ」と思える
- 誰でも「傲慢と善良」を持ち合わせているかもしれない
- 他の作品と繋がりがあるらしい
では、1つずつ説明していきますね。
長編小説なので時間がかかる
450ページにもなる長編小説です。
文庫本で読みましたが、分厚くて迫力があります。
そして「章」が少なく、区切りが多くありません。
その代わり、1行空いている箇所が多めにあります。
一気に読む必要はありませんが、少しだけ読んで、しばらくしてから続きを読み始めると、今までの内容を忘れているかもしれません。
毎日少しずつ読んでもよいのですが、途中で全く読まない空白期間を作らずに読むことがよいでしょう。
- 一気に読む時間がある時
- 少しずつでも、着実に読み進めることができる時
に読むことをおすすめします。

長編小説なので、一気に読める時や、少しずつでも着実に読み進められる時に読むのがおすすめです。
心の内面を、とても丁寧に描いた物語です。
空白期間があると、物語の雰囲気も忘れてしまいそうです。
読み始めたら、着実に読み進めることをおすすめします。
「傲慢と善良」は恋愛小説?ミステリー小説?
「傲慢と善良は恋愛小説」「いや、ミステリー小説だ」とよく言われているそうですが、恋愛小説とも、ミステリー小説とも違うような気がするのです。
だったら何かと明確に答えられないのですが・・・。
主人公は、婚約中のカップル。
2人のことが描かれているので、恋愛小説のように思えます。
しかし、架(男性)と真実(女性)の、それぞれの心の内がストーリーの中心です。
2人が、それぞれに何を感じているかを描いていて、恋愛小説とは違う気がします。
2人がどうなっていくかではなく、それぞれが何を感じているかを描いていて、恋愛小説とは違う気がします。
話は、真実が突然いなくなってしまう場面から始まります。
懸命に真実を探す架の姿は、ミステリー小説のように思えます。
しかし、架と真実の、それぞれの心の内がストーリーの中心です。
架が真実を探すうちに、彼女の過去に触れていき、真実は自分の過去と向き合い、架の過去と重ね合わせます。
それぞれが何を感じているかを描いていて、ミステリー小説とは違う気がします。
では、どんなジャンルかと聞かれると、正直わかりません。
「架と真実が、それぞれ何を感じているかを描いている小説」です。

「傲慢と善良」は、恋愛小説でも、ミステリー小説でもないような気がします。
あくまでも、私が感じたことです。
プロの評論家だと、違う判断になるかもしれませんので、違っていたら、ご了承ください・・・。
全編を通して「痛いトコつくなあ」と思える
全編を通して感じたことは、「うーん、痛いトコつくなあ」ということ。
皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。
「傲慢と善良」より
痛いなあ、と特に感じた1文です。
学校・会社などで協調性を求められる一方で、「自分を大切にしよう」と説く本がベストセラーになり、J-POPやK-POPは「自分を愛そう」と強調する歌がヒットしています。
協調性も、自分を大切にすることも、どちらも大切ですが、両方を一緒に実践するのは、無理があるのかも。
そして、架と真実は、生きていくための要領の良さがずいぶん違います。
進学・友人関係・就職など、これまでの人生の選択の仕方が異なり、お互いのズレを感じていきます。
1冊を通して、このズレが軸になっています。
これも「うーん、痛いトコつくなあ」と感じます。
さらに、2人の出身地は、東京と地方都市で違いがあります。
東京は、日本各地から進学や就職のために移住する街、日本人なら誰もが知る大都会です。
全国の出身者が暮らす東京は、よくも悪くも常識やルールの変化が大きい場所でもあります。
一方、地方都市は、進学や就職のために、東京などの大都会へ出る必要はありません。
地元で進学・就職・結婚が解決し、地元の常識で一生を過ごす人が、一定数存在する場所でもあります。
この大都会と地方都市の違いの描き方が、とてもわかりやすく描かれているのです。
やはり、「痛いトコくなあ」と感じます。

全編を通して、「痛いトコつくなあ」と感じるストーリーです。
痛いトコをつきまくる「傲慢と善良」ですが、はたして傲慢と善良を持ち合わせているのは、架と真実だけでしょうか。
誰でも「傲慢と善良」を持ち合わせているかもしれない
「傲慢と善良」は、誰でも持ち合わせているのではないかと感じました。
- 友人が就職試験に落ちた・失恋したと話していて、同情する一方で、自分はそうでないと優越感に浸ってしまう
- 仕事ができなくて困っている同僚を助ける一方で、自分はできると優越感に浸ってしまう
などの出来事は、誰の身にも起こることです。
落ち込んでいる人や、困っている人を助けたとしても、100%の良心かと言われると、そうでもないかも、と思うのです。
自分は彼らと違う、と優越感に浸っていないだろうか・・・。

多かれ少なかれ、「傲慢と善良」は、誰でも持っているのではないでしょうか。
誰もが持ち合わせている「傲慢と善良」だからこそ、怖いし、刺さる人が(私も含めて)たくさんいらっしゃるのでしょう。
他の作品と繋がりがあるらしい
「傲慢と善良」の人物が登場する、別の小説があります。
「島とぼくらと」「青空と逃げる」の2冊です。
辻村さんの作品は、このような登場人物リンク作品が多いのだとか。
お恥ずかしながら、知りませんでした。
きっと辻村深月ファンには、おなじみなのでしょう。
近いうちに読んで、レビューをお伝えしたいと考えています。

リンク作品も、面白そうです。
【おまけ】宮島未奈さん著書の「婚活マエストロ」も、作風が違いますが婚活がテーマです。
「ブックレコメンド」にレビューを載せていただきました。
文字のみなので、画面が白黒の端末で読むのがおすすめ