朝井リョウさん著書の「正欲」を読みました。
この本の感想・レビューをお伝えします。
「正欲」は、2023年に映画化されました。
キャストは、稲垣吾郎さん、新垣結衣さん、磯村勇斗さんなどです。
レビューを読むと、人によって「面白い」「面白くない」と評価が分かれる小説です。
それ以外にも「怖い」「意味がわからない」など、同じ小説でここまで感想が違うのかな、と不思議になる物語です。

「多様性」って簡単なことではない、と痛感させられました。
「正欲」感想・レビュー

「正欲」の感想・レビューは、
- 「読む前の自分には戻れない」は間違いない
- ラストまで読んでも、モヤモヤする
- 「つながり」「結婚」など希望が持てる
- 「多様性」と言うのは簡単だけど・・・
では、1つずつ説明していきますね。
「読む前の自分には戻れない」は間違いない
「正欲」の公式サイトを見ると、こんな言葉がありました。
- 読む前の自分には戻れない
- これは傑作か、問題作か
新潮社「正欲」公式サイトより
読了後は、私も「読む前の自分には戻れないなあ。」と感じました。
ニュースで「マイノリティ」「多様性」「ダイバーシティ」などと聞くと、読む前とは違う感覚になっているのです。
「マイノリティって、多様性って、こういうことか」と理解できたというよりも、前よりもっとわからなくなってしまったような感覚です。

「マイノリティ」「多様性」の意味が、読む前よりも、わからなくなってしまいました。
読む前と読んだ後でどう変わるかは、人によって違ってきそうです。
うまい言葉が見つからないのですが、とにかく読む人によって感想が大きく分かれる作品であることは間違いないような気がします。
ラストまで読んでも、モヤモヤする
「正欲」は、ミステリー小説のように、ラストまで読んでスッキリする内容ではありません。
最後まで「うーん」とモヤモヤしたままで終わってしまいました。
読了後もモヤモヤしてしまうのです。
それだけ内容が重いのでしょうか。
辛いのでしょうか。

ラストまで読んでも、モヤモヤしてしまいます。
とっても重い内容ですが、暗い場面ばかりではありません。
「つながり」「結婚」など希望が持てる
「正欲」の登場人物は、自分自身にとても苦しんでいます。
自らのマイノリティのせいで、わかり会える人に出会えないのです。
生まれた時(物心がついた時?)から、ずっと家族や友達、同僚などとはわかり会えず、辛い人生を送っています。
しかし、同じ境遇の人と出会い、つながったり、結婚したりします。
つながる理由は、お互いを認め合い、共感し、情報交換をするためです。
これは理解できますね。
よくある話。
ところが結婚の理由は、私達が思い浮かべる理由とは、かなりかけ離れています。
しかし、辛い想いを抱えている人どうしが生活を共にする姿に希望が持てます。

同じ境遇の人が、つながったり、結婚したりして希望が持てます。
そもそも、この物語を読むと、「人はなぜ結婚するのだろう?」などと考えてしまうのです。
「ええ!?どうして?」と思われるかもしれませんが、そんな問題提起をしてくれる小説です。
「多様性」と言うのは簡単だけど・・・
「多様性」が叫ばれる昨今ですが、この言葉にどんなイメージをお持ちでしょうか。
本当に多様性を理解できているのでしょうか。
多様性とは、ある集団の中に異なる特徴・特性を持つ人がともに存在することである。
Wikipedia「多様性」より一部抜粋
言葉の意味は理解できます。
- 好きな卵料理が卵焼きの人
- 好きな卵料理が目玉焼きの人
- 好きな卵料理がゆで卵の人
と違いがある人ともみんなでなかよくしましょう、これが多様性を認めるということです。
でも、
- 私は好きなのは卵焼き。目玉焼き・ゆで卵が好きな人がいることは理解できるけど、どうしてか理由がわからない。
- 私が好きなのは目玉焼き。他の卵料理が好きなんてあり得ない。
などと思っていないでしょうか。
卵料理なら単純ですが、これが性的マイノリティとなれば、なおさら理解は難しいのではないでしょうか。
言葉の意味だけを理解して、全てを理解できた気になってはいないでしょうか。
少数派の価値観を持った人の存在すら知らず、大多数の価値観の中だけで生きてしまっていないだろうか。
そして少数派の人が心を閉ざす社会の一員になってしまっていないだろうか、と考えてしまうのです。

「多様性」という言葉を、本当に理解できていますか?少なくとも、私は理解できていません。
「みんなちがって、みんないい」という言葉もありますね。
それぞれの人の個性や好みを大切にする。
素敵なことです。
でも、本当にみんなの違いを理解できているでしょうか。
「普通は◯◯だよね。」などと言ってしまい、知らず知らずのうちに大多数の意見に沿うように自分の気持ちを納得させているのではないか。
それで本当に満足できているのでしょうか。
そもそも普通って、何だろう・・・?
「多様性」と言葉で言うのは簡単です。
しかし「正欲」を読んで、少なくとも私は、この世に存在する全ての価値観を理解できてはいないだろうな、と思わずにはいられませんでした。

今でも、うーんと考えてモヤモヤしています。
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